#34 「修正3回まで」が、プロジェクトを壊す ── 回数ではなく目的で区切る
的場仁利
メインMC
纐纈智英
MC
今日のテーマは「修正3回まで」です。契約書や見積書でよく見かけるこの一文が、実はプロジェクトを失敗に導く罠になる——的場仁利さんはそう指摘します。回数で区切られるとデザイナーは身構え、発注側は「使わないともったいない」と回数の消化に走る。どちらも質から遠ざかっていきます。では何で区切るのか。目的です。目的にどこまで近づいたかで判断すれば、回数という物差しは要らなくなります。
このエピソードで話していること
- 回数で区切る契約の弊害は双方に出る。デザイナー側はこれ以上直しが入ってほしくないと身構え、無限地獄を避けようとする。発注側は10回まで直せるなら10回直そうとサービスをフルに使いにいく。それを前提に来られると、一発目で正解を滲み出そうという気持ちのほうが失われてしまう
- 区切るなら回数ではなく目的。目的に対して現在のアウトプットがどこまで近づいているか。達していなければ回数に関係なく直すべきだし、達しているなら1回でよい。目的は「この商品が目玉だから一番大きく見せる」「金額が訴求点だから目立たせる」「ターゲットに合わせた表現になっている」のように、要件を箇条書きで明文化しておく
- 無限修正になるのは、チェックする人が複数いてそれぞれ言うことが違い、それをまとめる人がいないから。まとめる人がいれば修正が多くなることはあっても無限にはならない。企業側にまとめ役を置いてもらう。社内調整は本当に大変な仕事なので、そこを引き受けてもらう方をきちんと作ることが条件になる
- 細かい修正の多くは、見る環境の違いから生まれている。紙は原寸で見るがPDFは拡大・縮小して見るため、誤ったディレクションが返ってくる。近くで見るなら機械的に揃えるのが正しいが、遠目では人は余白まで含めて認識するので、CやSのような文字は揃えないほうが揃って見える。PCとスマホでは色も変わる。デザイン書のセオリー部分をコピーして事前に渡しておくと防げる
- 直すほどデザインが崩れて建て直せない「修正迷子」は、今後増えていく。何案も出す訓練をせずテンプレートから作る仕事が増えたため。一方でA案からB案への作り直しは修正ではなく別案件として扱い、改めて費用をもらう。その話が来たときにまず驚いてみせるところから交渉は始まる
こんな方におすすめ
- デザイン制作の契約書や見積書に、修正回数を書いている/書かれている
- 修正のやりとりが終わらず、プロジェクトが停滞した経験がある
- 社内の意見がまとまらないまま、デザイナーに指示を出してしまっている
- デザイナーへの依頼の精度を上げたい経営者・発注担当者
- デザイナーとして、修正対応と追加費用の線引きに悩んでいる
このエピソードからわかるQ&A
契約書に「修正3回まで」と書くのは、なぜ問題なのですか?
回数で区切るとデザイナーは「これ以上直しが入ってほしくない」と身構え、発注側は「使わないともったいない」と回数の消化に走ります。どちらも目的から離れた行動になり、結果として仕上がりの質が下がってしまうためです。
修正回数の代わりに、何を基準にすればよいですか?
目的です。目的に対して現在のアウトプットがどこまで近づいているかで判断します。達していなければ回数に関係なく直すべきですし、達していれば1回で完了して構いません。
デザインの「目的」は、どのように書けばよいですか?
箇条書きで要件として明文化します。「この商品が目玉だから一番大きく見せる」「金額が訴求点なので目立たせる」「ターゲットに合わせた表現になっている」といった形です。定量化できない場合でも、箇条書きにしておけば判断の基準になります。
修正が終わらなくなるのは、何が原因ですか?
社内でチェックする人が複数いて、それぞれ言うことが違い、それをまとめる人がいないことが原因です。まとめ役がいれば修正が多くなることはあっても無限にはなりません。企業側にその役割を担う方を置くことが必要です。
A案からB案への作り直しは、修正に含まれますか?
別案件として扱うのが妥当です。最初の案がいったん完成したうえでの作り直しは、新たな制作にあたるためです。改めて費用をいただく前提で、依頼を受けた時点で条件を整理しておくことが重要です。
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メインMC
的場仁利
Mat N. Studio代表
https://japan-designers.jp/profile/1453/
タイポグラフィーの論客として、多数のデザイン書に携わる。高校でデザインを学び、大学で技術経営を専攻。営業職として年間1億円超の案件を担当した経験も持つ。現在は本・冊子・パッケージのデザイン、タイポグラフィ執筆を手がける傍ら、浮世絵・春画をモチーフにしたアートプロジェクト「艶絵グレース」のクリエイティブディレクターを務める。中部デザイン協会75年誌のブックデザイン・編集に携わるなど、デザインと経営の両面に精通。公益社団法人日本グラフィックデザイン協会会員、アドビ コミュニティエキスパート。
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纐纈智英
アストライド-Astride- 代表
「左脳と右脳のハイブリッド」を武器に、人の心の深層に迫るインタビュアー。行政職員として12年間、予算編成や徴収業務に従事した論理性と、音楽コンテストでグランプリを受賞した芸術的感性を併せ持つ。Adobeコミュニティエキスパートとして活動。これまでに200社以上の経営者インタビューを重ね、本人すら気づいていない「言葉にならない想い」を引き出し、ひとつの物語として残してきた。
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アストライドは、代表・纐纈が200社以上の経営者インタビューで培ってきたノウハウと対話力を軸に、BtoBマーケティングの視点からクライアント様それぞれのステージに合わせた各種クリエイティブをご提案・制作します。

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