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デザイン審美眼 2026.09.24 20分14秒

#39 安い見積もりは、何を削っているのか ── 価格が語る本気度

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的場仁利

メインMC

纐纈智英

MC

今日のテーマは「価格は嘘をつけない」です。第3部「契約と価格の審美眼」の締めくくり。「できるだけ安く、それでいて最高のクオリティを」という言葉が溢れる中で、的場仁利さんは、提示される価格にはそれ相応の理由があると言います。価格とは、その仕事に投入される知識と経験、考える時間、責任の重さが反映されたもの。安さの理由と高さの理由を、一件ごとに仕様が違うデザインという仕事に即して掘り下げます。

このエピソードで話していること

  • 適切な対価を払うことは、プロの経験と時間、そして本気度をリスペクトして買い取るという意思表示。極端に安い対価では作業に使える時間が限られ、表面を整えるだけの仕事になる。さらに、安く受け続けたデザイナー側の経営が行き詰まり、受け先そのものがなくなることも実際によくある
  • すれ違いの根は、デザインがオートクチュール的な仕事であること。飲食店にはメニューがあり、製造業は大量に捌く前提で価格を決めるが、クリエイティブは毎回案件が違う。業種特化でテンプレート化して価格を抑える会社もあるが、似たり寄ったりのものになる。「ライバル会社とそっくりだから嬉しい」「これ通りに作って」は、御社に入れ込める要素がなくて足枷になることが多い
  • 「相場」という言葉が対価の話を難しくしている。ラーメンが1,000円で収まるのは相当な努力の結果で、その圧縮を一件一件違う仕事に求めるのは筋が違う。一方で企業規模で料金が変わる指数もある。町内会向けとコカ・コーラ向けのチラシでは波及効果が違う。広告代理店の価格構造も、いい意味でも悪い意味でも見えてきた
  • 「最初は信用を得るために安く受けて発展した」と語る経営者は多い。それは成長が前提の社会で、安く受けた相手が大きくなれば次は大きな仕事が来るという暗黙の呼吸があったから。縮んでいく社会では、安く受けるとそれが基準になり、それ以上になることがない。フリーランスがまず口座を作るために安く受けざるを得ない現実も含めて、価格が下がり続ける構造を言葉にする
  • 対価とクオリティの相関関係。良い仕事には、それに見合う健全なフローが要る。高いものは高く、安いものはそれなり。樹木希林さんの富士フイルムのCM「美しい方はより美しく、そうでない方はそれなりに」が、そのまま当てはまる。次回からは第4部「デザイナーという他者との付き合い方」へ

こんな方におすすめ

  • 見積書を並べて、安いほうが何を削っているのか見抜けずにいる経営者
  • 「最初は安く」で始めた取引の単価が、その後ずっと上がらない
  • 相場という言葉で、外注先と噛み合わなくなった経験がある
  • 広告代理店やデザイン会社の価格の内訳に、疑問を持っている
  • デザイナーやフリーランスに、適正な対価を払いたいと考えている

このエピソードからわかるQ&A

安い見積もりは、何を削っているのですか?

作業に使える時間です。極端に安い対価では考える時間が取れず、表面を整えるだけの仕事になります。さらに安く受け続けたデザイナー側の経営が行き詰まり、受け先そのものがなくなることも実際によくあると的場仁利さんは言います。

適切な対価を払うとは、どういう意味ですか?

プロの経験と時間、そして本気度をリスペクトして買い取るという意思表示です。価格は物の値段ではなく、その仕事に投入される知識・経験・思考の時間・責任の重さが反映されたものだと番組では位置づけています。

飲食店や製造業と、デザインの価格はなぜ噛み合わないのですか?

デザインはオートクチュール的で、毎回仕様が違うからです。メニューがある飲食店や、大量に捌く前提の製造業と違い、同じものを繰り返し作る想定で価格を決められません。この違いが「相場」をめぐるすれ違いの根にあります。

「最初は安く受けて信用を得る」やり方は、いまも有効ですか?

番組では、それは社会が成長する前提で成り立っていた暗黙の呼吸だと整理しています。縮んでいく社会では安く受けた価格がそのまま基準になり、それ以上に上がることがありません。物価が上がる中で単価だけが下がる構造になります。

「これ通りに作ってください」と頼むのは、なぜ問題ですか?

参考にした会社にある要素が、御社にはないことが多いからです。理系大学の映像にある実験のカットを、文系学部で再現することはできません。ベンチマークがあるから安くできる、という発想は逆に足枷になりがちです。

メインMC

的場仁利

Mat N. Studio代表

https://japan-designers.jp/profile/1453/

タイポグラフィーの論客として、多数のデザイン書に携わる。高校でデザインを学び、大学で技術経営を専攻。営業職として年間1億円超の案件を担当した経験も持つ。現在は本・冊子・パッケージのデザイン、タイポグラフィ執筆を手がける傍ら、浮世絵・春画をモチーフにしたアートプロジェクト「艶絵グレース」のクリエイティブディレクターを務める。中部デザイン協会75年誌のブックデザイン・編集に携わるなど、デザインと経営の両面に精通。公益社団法人日本グラフィックデザイン協会会員、アドビ コミュニティエキスパート。

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纐纈智英

アストライド-Astride- 代表

「左脳と右脳のハイブリッド」を武器に、人の心の深層に迫るインタビュアー。行政職員として12年間、予算編成や徴収業務に従事した論理性と、音楽コンテストでグランプリを受賞した芸術的感性を併せ持つ。Adobeコミュニティエキスパートとして活動。これまでに200社以上の経営者インタビューを重ね、本人すら気づいていない「言葉にならない想い」を引き出し、ひとつの物語として残してきた。

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